*「エロヒム」とは、ヘブライ語で「神」という意味です。
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旅の途中にこの都市に立ち寄ったのは、モーツァルトのレクイエムが二十代のときから耳を離れなかったせいだろうか。
アルプスの東端の、美しいけれど小さな都市・ザルツブルクで二年半を過ごした。
最初の一年間は、この都市の何が私をこれほど魅了するのか見当もつかないまま夢中でシャッターを切り続けた。この時期が過ぎて、やがて風景の奥に隠されていたものが静かに現れてきた。 この「光」に形姿を与えるために、私は残りの一年半を使った。 そして試行錯誤ののち、一枚の印画紙で陰画(ネガ)と陽画(ポジ)の二つの世界が合体した。「光」はあのゴルゴタの丘でイエスが流したのとおなじ血の色となり、「見れども見ず、聞けども聞かず、知れども識ることのない」向こう側の世界が現れた。 光を影に影を光に逆転させたことで、新しい世界が出現した。 まるで太初に Elohim が「光あれ」といって万物の創造を開始したように。 あのレクイエムが透明な輝きのメロディーの奥に深遠の闇を蔵しているように、私の作品達が不可視の世界にひとつの形態を与え得たことに、そしてそれを今日みなさまにご覧いただけることに、深く感謝しています。
1993年 中川 賢俊
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